糖尿病だとEDのリスクは高い?妊娠しにくい?原因や症状、治療法を解説
- 更新日:2025.03.01
- 投稿日:2025.03.01

パートナーとの親密な時間、あるいは将来子供を持つことについて、不安を抱えていませんか? 糖尿病と診断されたとき、もしかしたら「ED(勃起不全)になったらどうしよう」と頭をよぎったかもしれません。
糖尿病の男性は、EDを発症するリスクが3倍以上になる可能性があると報告されています。高血糖は血管や神経を傷つけ、勃起に必要な血流を阻害してしまいます。
この記事では、糖尿病とEDの関係、原因や症状、そして現在行われている治療法について解説します。不安を解消し、未来への希望を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。
MSクリニック横浜では、EDでお悩みの方に対して適切な診断と治療を提供しています。一人で悩まず、適切な情報を得て、より良い生活への一歩を踏み出しましょう。
糖尿病とEDの関係
糖尿病とEDの関係について、以下の内容を解説します。
- 糖尿病がEDを引き起こすメカニズム
- 糖尿病によるEDのリスクは3倍以上
- 糖尿病による性機能への影響
- 糖尿病と妊娠しにくさの関係
糖尿病がEDを引き起こすメカニズム
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなる病気です。高血糖状態が続くと、全身の血管や神経にダメージを与えます。毛細血管と呼ばれる細い血管は影響を受けやすく、網膜症や腎症、神経障害といった合併症を引き起こします。実は陰茎の勃起にも、毛細血管が重要な役割を果たしているのです。
勃起のメカニズムを簡単に説明すると、性的興奮によって脳から信号が送られ、陰茎の血管が拡張し、血液が流れ込むことで起こります。糖尿病によって血管が傷ついて硬くなると、十分な血液が流れ込みにくくなり、勃起がうまくいかなくなってしまうのです。
高血糖は神経にも悪影響を及ぼします。勃起には、脳からの指令を陰茎に伝える神経も関わっています。この神経が糖尿病によって損傷を受けると、勃起の指令がうまく伝わらなくなり、勃起障害につながるのです。
さらに、糖尿病は男性ホルモンであるテストステロンの分泌量を低下させる可能性も指摘されています。テストステロンは性欲や勃起機能に重要な役割を果たすホルモンです。テストステロンが不足すると、性欲が低下したり、勃起しにくくなったりする可能性があります。
糖尿病によるEDのリスクは3倍以上
糖尿病の方は、そうでない方に比べてEDのリスクが3倍以上高いと言われています。世界中の糖尿病男性患者を対象とした研究では、EDの有病率が65.8%と高いことが示されています。これは、2人に1人以上がEDに悩まされているという驚くべき数字です。
年齢が40歳以上、糖尿病の罹患期間が10年以上、BMIが30以上、末梢血管疾患がある方は、特にEDのリスクが高いと言われています。高血圧や高脂血症といった生活習慣病もEDのリスクを高めるため、注意が必要です。
血糖コントロールの状態もEDのリスクに大きく影響します。血糖値が高い状態が続くと、血管や神経の障害が進行し、EDが悪化しやすくなります。適切な血糖コントロールを維持することが、EDの予防・改善につながるのです。
年齢や生活習慣、ストレスなどがどのように影響するのか、EDになりやすい人の特徴や具体的な対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>ED(勃起不全)の原因とは?なりやすい年齢や症状の特徴、対処法について
糖尿病による性機能への影響
糖尿病は、ED以外にも性欲の低下や射精障害、オーガズムに達しにくくなるなど、さまざまな性機能に影響を与える可能性があります。
性欲低下は、性的な欲求を感じにくくなる状態です。パートナーとのスキンシップを以前ほど求めない、性的なことに関心が薄れていると感じる場合は、性欲低下が疑われます。
射精障害には、射精の勢いが弱くなる、射精量が少なくなるといった症状があります。また、逆行性射精といって、精液が膀胱の方に逆流してしまう場合もあります。
オーガズム障害は、性的な刺激を受けても、オーガズム(性的絶頂感)に達しにくくなる状態です。以前は感じていた快感が得られない、満足感が得られないといった悩みを抱える方がいます。
これらの症状も、血管や神経の障害、ホルモンバランスの乱れなどが原因で起こると考えられています。
糖尿病と妊娠しにくさの関係
糖尿病は、男性の妊孕性(妊娠させる能力)にも影響を与えることがあります。高血糖は精子形成に悪影響を与え、精子数減少、運動率低下、形態異常などを引き起こす可能性があります。精子の質の低下につながり、妊娠しにくくなる原因となる可能性があります。
EDによって性交渉が困難になることも、妊娠しにくくなる原因の一つです。糖尿病によるEDは、男性の心理的ストレスを高め、妊娠への意欲や性交渉の頻度に影響を与える可能性があります。
パートナーが糖尿病の場合、妊娠糖尿病のリスクが高まることも知られています。妊娠糖尿病は、母体と胎児の両方にさまざまな合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。妊娠を希望する場合は、パートナーと協力して、糖尿病の管理を徹底することが大切です。
糖尿病によるEDの症状と検査
糖尿病によるEDの症状と検査について、以下の内容を解説します。
- 糖尿病によるEDの症状
- セルフチェック方法
- 糖尿病EDの検査方法
糖尿病によるEDの症状
糖尿病によるEDの症状は、以下の3つの観点から見ていくことができます。
- 勃起の硬さ
性行為を行うのに十分な硬さが得られない、あるいは全く勃起しないといった症状です。以前は硬く勃起していたのに、最近では性行為に支障が出るほど硬さが不十分だと感じる、といった変化に気づく方もいらっしゃいます。 - 勃起の持続時間
勃起状態を維持できない、あるいは維持するのに苦労するといった症状です。挿入まではできても、途中で勃起が萎えてしまう、挿入がそもそも困難という方もいます。 - 性欲
性的な欲求を感じにくくなる、性的なことに関心が薄れるといった症状です。パートナーとのスキンシップを以前ほど求めない、性的な刺激に反応しにくくなったと感じる方もいらっしゃいます。
症状は、常に現れるとは限りません。一時的なものや、特定の状況でのみ起こる場合もあります。勃起不全は器質的、関係的、心理的要因など多様な要因が関与するため、その時々で症状の強さが変化することもあります。
症状が続くようであれば、早めに経験豊富な医師に相談することが大切です。糖尿病の合併症としてEDを発症している場合、文献にもあるように心臓病などの他の合併症のリスクも高まっている可能性も考慮すべきです。
セルフチェック方法
EDのセルフチェックとして、国際勃起機能スコア(IIEF)が用いられることがあります。過去1か月の性生活に関する質問に答えることで、EDの重症度を自己評価できるものです。
以下にIIEFの質問項目の一部を簡略化して紹介します。
- 勃起の硬さ:性行為を行うのに十分な勃起の硬さを得られましたか?
- 勃起の維持:性行為を最後まで続けるのに十分な勃起を維持できましたか?
- 挿入:挿入することができましたか?
- 満足度:性行為に満足しましたか?
IIEFは、性機能の状態を客観的に評価するためのツールとして世界中で広く使われています。質問項目への回答を点数化することで、EDの重症度を数値で把握できます。
もちろん、セルフチェックだけでEDの診断が確定するわけではありません。あくまで目安として捉え、気になる症状があれば経験豊富な医師に相談しましょう。セルフチェックの結果を医師に伝えることで、よりスムーズな診断につながることもあります。
糖尿病EDの検査方法
糖尿病EDの検査では、まず医師による問診が行われます。生活習慣やEDの症状、既往歴などについて詳しく聞かれます。問診の具体例は以下のとおりです。
- 糖尿病の罹患期間
- 血糖コントロールの状態
- 喫煙や飲酒の習慣
- 服用中の薬
- 過去の病気や手術の経験
- EDの症状の程度や頻度
- 性生活のパートナーの有無
- 精神的なストレスの有無
問診に加えて、次のような検査が行われることもあります。
- 身体診察
陰茎や睾丸の状態、神経の反射などを確認します。触診によって、陰茎の動脈の拍動や、神経の反応、睾丸の大きさや硬さなどを確認します。 - 血液検査
血糖値やホルモン値などを測定し、糖尿病の有無や他の病気が隠れていないか調べます。具体的には、血糖値(HbA1c)、男性ホルモン(テストステロン)、甲状腺ホルモン、肝機能、腎機能などを調べることがあります。 - 血管機能検査
陰茎への血流を測定し、血管の状態を評価します。超音波検査を用いて、陰茎の動脈の血流速度や、血管の拡張機能などを調べます。 - 神経機能検査
陰茎の神経の働きを調べます。陰茎の皮膚に微弱な電流を流し、神経の伝達速度などを測定します。
検査結果を総合的に判断し、EDの原因や重症度を診断します。検査結果によっては、さらに詳しい検査が必要になる場合もあります。
糖尿病性EDの治療法
糖尿病性EDの治療法について、以下の内容を解説します。
- 血糖コントロール
- ED治療薬の投与
- 陰茎注射
血糖コントロール
糖尿病性EDの治療において、何よりも大切なのは血糖コントロールです。高血糖の状態が続くと、血管や神経が徐々にダメージを受け、EDの根本原因となります。
高血糖は、血管内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を促進します。動脈硬化は血管を硬く狭くし、陰茎への血流を阻害するため、勃起が困難になります。
高血糖は神経にも悪影響を及ぼします。勃起には、脳からの指令を陰茎に伝える神経が不可欠です。高血糖によって神経が損傷を受けると、勃起の指令がうまく伝わらなくなり、EDにつながります。
一般的には、血糖コントロールの目標としてHbA1c 7.0%未満を目指すことが推奨されています。ただし、個々の状況により適切な目標は異なるため、医師と相談しながら管理することが重要です。
ED治療薬の投与
血糖コントロールと並行して行われるのが、ED治療薬の投与です。ED治療薬は、血管を拡張して血流を改善し、勃起機能の向上をサポートするとされています。薬の種類はいくつかありますが、それぞれ効果の持続時間や副作用が異なります。医師と相談のうえ、自分に合った薬を選ぶことが大切です。
ED治療薬は、種類によって服用のタイミングや効果の持続時間が異なります。一般的に、一部の薬は性行為の1時間前に服用し、効果は4~5時間程度持続するとされていますが、持続時間が24~36時間の薬もあります。服用の際は、医師の指示に従いましょう。
ED治療薬を検討する際は、費用や選び方も重要なポイントになります。治療薬の価格相場や、手術を含めたED治療の費用について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>ED治療の費用は?治療薬や手術の価格相場を比較
陰茎注射
ED治療薬で効果が不十分な場合や、服用できない場合は、陰茎注射という治療法があります。血管拡張作用のある薬剤を直接陰茎海綿体に注射することで勃起を促す方法です。即効性があり、高い効果が期待できますが、自己注射が必要となるため、医師から正しい注射方法の指導を受けることが重要です。
注射による痛みや内出血などの副作用が生じる可能性もあるため、医師とよく相談しながら治療を進めていきましょう。
糖尿病EDの予防と日常生活の注意点
糖尿病EDの予防と日常生活の注意点について、以下の内容を解説します。
- 食生活の改善
- 適度な運動
- ストレス軽減
- 経験豊富な医師への相談
食生活の改善
糖尿病の方は、食生活の管理が重要です。バランスの取れた食事を摂ることは、血糖値のコントロールだけでなく、血管や神経の健康を維持するためにも不可欠です。
血管の健康はEDに直結します。勃起は、陰茎の血管が拡張し、血液が流れ込むことで起こります。しかし、糖尿病によって血管が傷つくと、十分な血液が流れ込みにくくなり、勃起障害につながるのです。
食生活の改善は以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 野菜を積極的に摂る
野菜には、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維は、血糖値の急上昇を抑えるとともに、血管の健康維持にも役立ちます。目標は1日350g。さまざまな種類の野菜をバランスよく摂り入れましょう。緑黄色野菜には抗酸化作用のあるβ-カロテンが豊富に含まれており、活性酸素による血管へのダメージを抑制する効果も期待できます。 - 糖質をコントロールする
白米、パン、麺類などの炭水化物は、体内で糖質に変換されます。糖質の過剰摂取は血糖値を急上昇させ、血管を傷つける原因となります。特に、精製された穀物は血糖値を上昇させやすいので、玄米、全粒粉パン、そばなどの精製されていない穀物を選ぶようにしましょう。GI値(グリセミック・インデックス)を参考に、血糖値の上昇が緩やかな食品を選ぶことも有効です。 - 良質な脂質を摂る
脂質は、細胞膜の構成成分となるなど、体にとって重要な栄養素です。しかし、すべての脂質が良いわけではありません。飽和脂肪酸はLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やし、動脈硬化を促進する可能性があります。一方、青魚に多く含まれるEPAやDHA、ナッツ類に含まれるオレイン酸、オリーブオイルに含まれるα-リノレン酸などは、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やし、血管の健康を維持する効果が期待できます。揚げ物や脂身の多い肉などは控えめにし、良質な脂質を積極的に摂るように心掛けましょう。
毎日の食事内容を少しずつ改善していくことが、糖尿病EDの予防・改善につながります。
適度な運動
適度な運動は、血糖値のコントロールを改善するだけでなく、血行を促進し、血管の健康を維持するためにも効果的です。激しい運動は必ずしも必要ありません。ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳など、無理なく続けられる有酸素運動を習慣に取り入れましょう。1回30分程度、週に3回以上を目安に行うと良いでしょう。
運動は、筋肉のインスリン感受性を高め、血糖値を下げる効果があります。また、血行が促進されることで、陰茎への血流も改善し、勃起機能の維持に役立ちます。さらに、運動はストレス軽減にも効果的です。ストレスは自律神経のバランスを崩し、EDを引き起こす要因の一つとなります。
日常生活の中でこまめに体を動かすことも意識しましょう。エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、1駅前で降りて歩くなど、小さな工夫を積み重ねることで、運動不足を解消し、健康的な生活を送ることができます。
ストレス軽減
ストレスは、自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させる作用があります。陰茎への血流が悪くなり、勃起障害につながる可能性があるため、ストレスを軽減するための工夫が重要です。
リラックスできる時間を作ること、趣味を楽しむこと、十分な睡眠をとることなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。一人で抱え込まずに、家族や友人、医療機関などに相談することも効果的です。
心身のリラックスをもたらすヨガや瞑想なども試してみる価値があります。どの活動も自律神経のバランスを整え、ストレスホルモンの分泌を抑える効果が期待できます。
経験豊富な医師への相談
糖尿病によるEDの症状や治療に関する情報はインターネット上でも入手できますが、医学的根拠のない情報や誤った情報も少なくありません。正しい情報を得て、適切な治療を受けるためにも、経験豊富な医師への相談が重要です。
EDは、心臓血管疾患、糖尿病、うつ病など、さまざまな健康問題と関連していることが示唆されています。勃起不全は、男性の包括的な健康状態を把握するための重要な指標となる可能性があるのです。
ご自身の状態を正しく理解し、最適な治療法を選択するためにも、経験豊富な医師の指導を受けることをおすすめします。MSクリニックでは、EDに関する診察や治療を受けることができます。EDの症状にお悩みの方、糖尿病と診断され不安を感じている方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
糖尿病とED、妊娠しにくさの関係について解説しました。糖尿病は血管や神経にダメージを与え、EDのリスクを高めます。高血糖は精子の質にも影響し、妊娠しにくくなる可能性もあります。
適切な血糖コントロールとED治療薬の服用、生活習慣の改善により、症状の改善が期待できる場合があります。不安を抱え込まず、まずは経験豊富な医師に相談してみましょう。
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参考文献
- Saffati G, Seyan Z, Rendon DO, Almuhaideb M, Hinojosa-Gonzalez DE, Kronstedt S, Khera M.Erectile dysfunction as a holistic indicator of well-being: a narrative review. Sex Med Rev, 2025 Jan;13(1):p11-19.
- Tegene Atamenta Kitaw, Biruk Beletew Abate, Ribka Nigatu Haile. The global burden of erectile dysfunction and its associated risk factors in diabetic patients: an umbrella reviews. BMC Public Health, 2024, 24, Article number: 2816.
ページ監修:総院長「葉山芳貴」紹介

総院長、医学博士 葉山芳貴
経歴
- 平成14年
- 聖マリアンナ医科大学 卒業
- 平成20年
- 大阪医科大学 大学院 卒業
- 平成22年
- 大手美容形成外科 院長 就任
- 平成27年
- メンズサポートクリニック開設
- 平成28年
- メンズサポートクリニック新宿 院長就任
- 平成28年
- 医療法人清佑会 理事長 就任
資格
医師免許(医籍登録番号:453182)
保険医登録(保険医登録番号:阪医52752)